レバーを食べるとはげるらしい、鶏レバーの食べ過ぎで抜け毛が増える、なんて話を見かけると、レバー好きのあなたはちょっと不安になりますよね。しかもレバーは鉄や亜鉛、たんぱく質などを含んでいて髪にいいとも言われます。「髪にいいの?悪いの?結局どっちなんだよー」と混乱しやすい食べ物です。
先に答えると、レバーを普通に食べただけで必ずはげるわけではありません。ただし、鶏レバーや豚レバーにはレチノール型のビタミンAがかなり多く含まれていて、長期間にわたり過剰に摂り続けると、ビタミンA過剰症の症状として脱毛が起こることがあります。[5]
ここで大事なのが、レバーの食べ過ぎで何グラムから危険なのか、レバーを毎日食べるとどうなるのか、ビタミンA過剰と脱毛はどう関係するのかを分けて考えることです。一度たくさん食べたことと、毎日のように高い摂取量を続けることは同じではありません。
とくに注意したいのが、成人のビタミンA耐容上限量として示される2,700μgRAE/日という数字の読み方です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、18歳以上の男女について耐容上限量2,700μgRAE/日が設定されています。[1]この数字を一度超えたら中毒になる、あるいはその日から髪が抜け始める、という意味ではありません。
この記事では、レバーと抜け毛・薄毛の関係、鶏レバーの食べ過ぎ、ビタミンA過剰症、鶏・豚・牛レバーの違い、レバーは髪にいい食品なのか、さらに実際に抜け毛が増えたときにAGAなど別の原因をどう考えればよいのかまで、私たち髪の毛目線で分かりやすく整理していきます。









- レバーではげるといわれる本当の理由
- 鶏・豚・牛レバーのビタミンA量の違い
- 食べ過ぎの量と耐容上限量の正しい考え方
- レバー以外の抜け毛やAGAを見分けるポイント
レバーではげるといわれる理由
まずは、一番気になる「レバーではげるのか?」から整理します。ポイントは、レバーそのものが毛根を直接攻撃するわけではなく、レバーに多く含まれるレチノール型のビタミンAを長期間摂り過ぎることです。
さらにややこしいのが、レバーならどれも同じではないこと。鶏・豚・牛では含まれるビタミンA量にかなり差があります。まずは仕組みを理解してから、具体的な量や頻度を見ていきましょう。
ビタミンA過剰で脱毛は起こる?

はい。ビタミンAを慢性的に過剰摂取すると、症状の一つとして脱毛が起こることがあります。ビタミンA中毒では、乾燥した皮膚や脱毛、骨・関節痛、頭痛などがみられることがあります。[5]ただし、ビタミンAそのものが髪に悪い栄養素ではありません。
ビタミンAは、正常な視覚を保つことや、皮膚・粘膜を含む上皮組織の維持などに関わる大切な栄養素です。一方で、既成ビタミンAは体内に貯蔵され、過剰な摂取が続くと毒性につながる可能性があります。[11]
ここで問題になりやすいのが、レバーなどの動物性食品や一部のサプリメント、肝油などから摂るレチノールやレチニルエステルなどの既成ビタミンAです。慢性的なビタミンA過剰症では、乾燥した皮膚、毛髪の変化、脱毛などがみられることがあります。[11]
ここが大事。
レバーを食べる=はげるではなく、既成ビタミンAを長期に過剰摂取することで脱毛が起こる可能性がある、という順番です。
私たち髪の毛には「毛周期」と呼ばれるサイクルがあります。毛包では髪が成長する成長期、毛包が退縮する退行期、次の成長を待つ休止期という流れを繰り返しています。[10]
ビタミンAの活性代謝物であるレチノイン酸は毛包の働きにも関係します。ヒト頭皮毛包を培養した研究では、all-trans retinoic acidによって毛幹の伸長が抑えられ、毛包が早期に退行期様の状態へ移行することが確認されています。[6]
ただし、これは「レバーを○g食べると毛周期が止まる」という境界量を示したものではありません。実際の人間では、摂取量、継続期間、サプリメントの併用、体調、別の脱毛症の有無などを合わせて考える必要があります。
β-カロテンとは分けて考えましょう。
にんじんやかぼちゃなどに含まれるβ-カロテンは、体内で必要に応じてビタミンAへ変換されるプロビタミンAカロテノイドです。レバーなどから摂る既成ビタミンAと同じように過剰症を考える必要はありません。[11]
また、昨日レバーを食べて今日抜け毛が多かったからといって、すぐに原因だと断定することはできません。休止期脱毛では、原因となる出来事から時間が経って抜け毛が目立つことがあります。[10]
鶏レバーの食べ過ぎは危険?

レバーの中でも、とくにビタミンA量を意識したいのが鶏レバーです。
文部科学省の食品成分データベースでは、生の鶏肝臓100g当たりのレチノール活性当量は14,000μgRAEです。[2]成人のビタミンA耐容上限量として示される2,700μgRAE/日と比べると、かなり大きな数字です。[1]
単純に20gへ比例換算すると、約2,800μgRAEです。
ただし、20g食べたら危険という意味ではありません。
耐容上限量を一度超えたことと、実際にビタミンA中毒を発症することは同じではありません。MSDマニュアルでは、年長児・成人の慢性ビタミンA中毒は通常、100,000IU、約30,000μgRAE/日を超える用量を数カ月継続した後に生じると説明されています。[5]
つまり、鶏レバーを一度食べ、その日の総摂取量が耐容上限量を少し超えたとしても、それだけを理由に「今日から脱毛が始まる」と判断することはできません。
一方で、鶏レバーを毎日大量に食べながら、ビタミンAを含むサプリメントや肝油なども利用している場合は、総摂取量が高くなる可能性があります。[11]
鶏レバーを食べるときに確認したいこと
- 一度だけなのか、ほぼ毎日なのか
- 1回にどのくらい食べているか
- ビタミンA入りサプリを併用していないか
- 肝油など別の高ビタミンA食品を重ねていないか
- 脱毛以外の症状がないか
レバーを毎日食べるとどうなる?

レバーは栄養価が高い食品ですが、毎日たくさん食べるほど健康になるわけではありません。とくに鶏レバーや豚レバーは、少量でも既成ビタミンAを多く摂れる食品です。
鶏肝臓は100g当たり14,000μgRAE、豚肝臓は13,000μgRAEのレチノール活性当量を含みます。[2][3]
- 鶏・豚・牛のどのレバーを食べているか
- 1回に食べる量はどれくらいか
- 週に何回、何カ月続けているか
- ビタミンA入りサプリを併用していないか
- 肝油などを摂っていないか
ビタミンA中毒には急性と慢性があり、慢性中毒では高用量の摂取が長期間続くことが問題になります。[5]
既成ビタミンAは肝臓に貯蔵され、過剰な状態が続くと毒性が問題になります。[11]
サプリの表示もチェック。
マルチビタミン、ビタミンAサプリ、肝油などが重なると総摂取量が増えることがあります。
レバーの食べ過ぎは何グラムから?

「結局、何グラムならいいの?」と気になりますよね。
「レバーは○gまでなら全員絶対安全」「○gを超えたら脱毛する」という境界量は設定できません。
成人のビタミンA耐容上限量2,700μgRAEと食品成分表の値を単純に比較すると、次のようになります。[1][2][3][4]
| レバー | ビタミンA 100g当たり | 20gの概算 | 2,700μgRAE相当の概算量 |
|---|---|---|---|
| 鶏レバー | 約14,000μgRAE | 約2,800μgRAE | 約19g |
| 豚レバー | 約13,000μgRAE | 約2,600μgRAE | 約21g |
| 牛レバー | 約1,100μgRAE | 約220μgRAE | 約245g |
この約19gや約21gは、中毒量でも脱毛開始量でもありません。
MSDマニュアルでは、慢性ビタミンA中毒について成人では通常100,000IU、約30,000μgRAE/日を超える用量を数カ月摂取した後に発症するとされています。[5]
耐容上限量を「中毒が始まる量」と読み替えないでください。
レバーを食べた量だけから、ビタミンA中毒や脱毛の発症を断定することはできません。
鶏・豚・牛レバーのビタミンA比較

食品成分データベースの生100g当たりでは、鶏レバーが14,000μgRAE、豚レバーが13,000μgRAE、牛レバーは1,100μgRAEです。[2][3][4]
| 種類 | 生100g当たり | 20g当たりの概算 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 鶏レバー | 約14,000μgRAE | 約2,800μgRAE | 特にビタミンAが多い |
| 豚レバー | 約13,000μgRAE | 約2,600μgRAE | 鶏と同じく非常に多い |
| 牛レバー | 約1,100μgRAE | 約220μgRAE | 鶏・豚より大幅に少ない |
また鶏レバーには100g当たり鉄9.0mg、亜鉛3.3mg、ビタミンB12 44.0μg、葉酸1,300μgが含まれています。[2]
ビタミンAが多いから悪い食品ということではありません。種類・量・頻度を見ながら利用することが大切です。
レバーではげる不安への対処法
レバーをよく食べていたとしても、薄毛の原因が必ずビタミンAとは限りません。AGA、円形脱毛症、休止期脱毛など、髪が抜ける理由はいくつもあります。[9][10]
レバーは髪にいい食品なの?

レバーには、たんぱく質、鉄、亜鉛、ビタミンB12、葉酸などが含まれています。生の鶏レバー100gには、たんぱく質18.9g、鉄9.0mg、亜鉛3.3mg、ビタミンB12 44.0μg、葉酸1,300μgが含まれます。[2]
急激な体重減少や低たんぱく状態、鉄などの栄養不足は脱毛に関連することがありますが、栄養不足が確認されていない人が特定の栄養素を大量摂取すれば髪が増えるという十分な根拠はありません。[7]
髪に必要な栄養を含んでいる食品と、薄毛を治す薬は別物です。
AGAでは、ミノキシジル外用や、男性ではフィナステリド・デュタステリド内服などが診療ガイドラインで評価されています。[8]レバーを大量に食べることでAGAが治療できるわけではありません。
極端な食事制限や急激な減量も休止期脱毛のきっかけになることがあります。[10]
ビタミンA過剰症の脱毛は治る?

ビタミンA過剰が原因なら、過剰な摂取源を取り除くことが基本です。多くの症状は徐々に改善する一方、重度の肝障害や骨への影響などは長く残る可能性があります。[11]
髪には毛周期があるため、原因を取り除いた翌日から抜け毛がゼロになるとは限りません。休止期脱毛では原因となる出来事から時間が経って抜け毛が目立つ場合があります。[10]
髪の回復には時間差があります。
「○日で必ず戻る」という全員共通の期間はありません。
また、処方されているレチノイド系医薬品を使用している場合は自己判断で中止せず、処方した医師へ相談してください。
乾燥肌、強い頭痛、吐き気、骨や関節の痛みなど髪以外の症状もある場合は、医療機関への相談を検討してください。[5]
レバーと抜け毛、AGAとの違い

AGAは遺伝的素因やアンドロゲンの作用などが関与し、前頭部や頭頂部を中心に毛包が徐々に小さくなっていく進行性の脱毛症です。[8]
| 状態 | 抜け方の特徴 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| ビタミンA過剰 | 全体的な脱毛になることがある | レバー・サプリの量と期間、全身症状 |
| AGA | 生え際・前頭部・頭頂部が徐々に薄くなる | 毛が細く短くなる、家族歴、進行性 |
| 円形脱毛症 | 円形や類円形に突然抜ける | 境界のはっきりした脱毛斑 |
| 休止期脱毛 | 頭全体から抜け毛が増える | 数カ月前の発熱、減量、手術、出産など |
円形脱毛症ではAGA、頭部白癬、抜毛症、牽引性脱毛症などとの鑑別が重要です。[9]
休止期脱毛では、原因となる出来事から1〜6カ月程度、典型的には約3カ月遅れて抜け毛が目立つ場合があります。[10]
皮膚科を検討したいサイン
- 抜け毛が急激に増えた
- 数カ月以上抜け毛が続いている
- 前頭部や頭頂部が徐々に薄くなっている
- 円形に髪が抜けている
- 頭皮に強い赤み、痛み、かゆみがある
- 眉毛や体毛にも脱毛がある
- 頭痛や吐き気など全身症状もある
なお、血清ビタミンAを一回測れば「レバーが原因」と完全に判定できるわけではありません。摂取歴や症状、必要に応じた検査などを含めて総合的に評価します。[11]
妊娠中のレバーは食べ過ぎに注意

妊娠中は、既成ビタミンAや全身性レチノイドの過剰曝露による胎児への影響に注意が必要です。[11]
成人のビタミンA耐容上限量は2,700μgRAE/日です。[1]
生の鶏レバー20gなら食品成分表からの単純計算で約2,800μgRAE、豚レバー20gなら約2,600μgRAEです。[2][3]
妊娠中は自己流でビタミンAを増やさないでください。
レバーやビタミンA入りサプリメントを高頻度に摂っている場合は、産婦人科や管理栄養士へ相談してください。
一方、野菜に含まれるβ-カロテンは既成ビタミンAと同じように扱う必要はありません。[11]
まとめ|レバーではげるとは限らない

レバーを普通に食べただけで必ずはげるわけではありません。ただし、ビタミンAを慢性的に過剰摂取すると、脱毛を含むビタミンA中毒の症状が起こることがあります。[5]
今回のポイントを整理します。
- レバーを食べたら必ずはげるわけではない
- ビタミンA過剰症では脱毛が起こることがある
- 鶏・豚レバーは牛レバーよりビタミンAがかなり多い
- 耐容上限量2,700μgRAEは一食の中毒量ではない
- 一度の摂取より長期的な量と頻度を見る
- サプリや肝油などほかのビタミンA源も確認する
- AGAなど別の脱毛症も忘れない
鶏レバーを一度20g食べたからはげる、という話ではありません。
すでに抜け毛が増えている場合はレバーだけを犯人にせず、AGA、円形脱毛症、休止期脱毛など別の原因も考えましょう。[8][9][10]
数値は一般的な目安です。正確な情報は公式サイトをご確認ください。抜け毛が続く場合やビタミンAの過剰摂取が心配な場合、妊娠中の摂取について迷う場合は、最終的な判断は専門家にご相談ください。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)策定検討会報告書」
- 文部科学省 食品成分データベース「にわとり[副品目]肝臓/生」
- 文部科学省 食品成分データベース「ぶた[副生物]肝臓/生」
- 文部科学省 食品成分データベース「うし[副生物]肝臓/生」
- MSDマニュアル プロフェッショナル版「ビタミンA中毒」
- Foitzik K, et al. Towards dissecting the pathogenesis of retinoid-induced hair loss
- Guo EL, Katta R. Diet and hair loss: effects of nutrient deficiency and supplement use
- 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」
- 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン2024」
- NCBI Bookshelf, StatPearls「Telogen Effluvium」
- NCBI Bookshelf, StatPearls「Vitamin A Toxicity」

