ゆで卵ではげる?生卵とビオチンの関係を解説

当ページのリンクには広告が含まれています。
ゆで卵に驚くけい太と冷静な髪の毛さん。「ゆで卵ではげる?生卵とビオチンの関係を解説」のアイキャッチ画像。

ゆで卵を食べるとはげる、なんて話を見かけると、毎朝ゆで卵を食べている人はちょっと不安になりますよね。卵は髪にいいと言われることもあるのに、生卵ははげる、卵白がよくない、ビオチンが不足する、なんて話まで出てくるので、そりゃ混乱します。

しかも検索していると、「生卵ではげる」「卵白ではげる」「卵かけご飯ではげる」「ビオチンは髪にいい」「ゆで卵は育毛におすすめ」など、正反対に見える情報まで出てきます。卵は髪にいいのか悪いのか、結局どっちなんだよー、となりますよね。

この話を整理するときに中心になるのが、生の卵白に含まれるアビジンと、ビタミンの一種であるビオチンです。アビジンにはビオチンと強く結合して消化管からの吸収を妨げる性質があり、ビオチンが極端に不足すると毛髪が薄くなったり脱毛したりすることがあります。[1]

ただし、ここからいきなり「卵を食べるとはげる」と結論づけるのは早すぎます。

先に結論を言うと、現在確認できる公的・医学資料では、加熱したゆで卵を通常の食生活の範囲で食べることがAGAの原因になるとは示されていません。AGAは、毛周期の成長期が短くなり、前頭部や頭頂部の毛髪が徐々に細く短くなる脱毛症で、遺伝や男性ホルモンの関与が知られています。[2]

その一方で、「じゃあゆで卵を毎日食べれば髪が生えるの?」という逆方向の話にも注意が必要です。ゆで卵にはたんぱく質やビオチン、亜鉛などが含まれていますが、栄養素を含んでいることと、AGAを治療したり発毛させたりすることは同じではありません。[1][2]

今回は、ゆで卵ではげるという噂を出発点に、生卵、卵白、アビジン、ビオチン、卵かけご飯、薄毛、育毛、AGAとの違いまで、必要以上に怖がらず、逆に期待しすぎもしないよう順番に整理していきます。

この記事のポイント!

  • ゆで卵ではげると言われる理由
  • 生卵白のアビジンとビオチンの関係
  • ゆで卵が髪や薄毛に与える影響
  • 卵かけご飯や毎日の卵摂取の考え方
目次

ゆで卵ではげるのは本当?結論を解説

まず、一番気になるところからいきましょう。ゆで卵を食べること自体が、AGAや一般的な薄毛を引き起こすと示した臨床的根拠は確認されていません。一方で、生の卵白に含まれるアビジンがビオチンの吸収を妨げること、加熱によってアビジンが変性し、その作用を失うことは公的資料で説明されています。[1]

「卵ではげる」という噂には科学的な話が一部含まれています。ただ、その話の対象は主に生の卵白です。ゆで卵は加熱されているため、生卵白について知られているアビジンの働きをそのまま当てはめることはできません。[1]

ここをごちゃ混ぜにすると、「卵は髪に悪いから全部避けた方がいい」という極端な結論になってしまいます。髪の毛としては、そこまで怖がらなくて大丈夫ですよ、と最初に伝えておきたいところです。

先に結論

  • ゆで卵を食べるとAGAになるという根拠は確認されていない
  • 噂の中心は生卵白に含まれるアビジン
  • アビジンはビオチンと結合して吸収を妨げる
  • 加熱するとアビジンは変性する
  • ゆで卵を食べれば髪が生えるという根拠もない

卵を食べるとはげる説の原因

卵を食べるとはげる説の原因を解説する髪の毛さんとけい太

卵を食べるとはげるという説は、完全に何もないところから生まれたわけではありません。だからこそ、ちょっと厄介なんですよね。

話の出発点になっているのは、生の卵白に含まれるアビジンという糖タンパク質です。アビジンには、ビタミンの一種であるビオチンと非常に強く結合する性質があり、生卵白中のアビジンは食事由来のビオチンの消化管吸収を妨げます。[1]

ビオチンが欠乏すると、皮膚症状などとともに毛髪が薄くなり、脱毛に進むことがあります。[1] この部分だけ切り取れば、「卵白→ビオチン不足→脱毛」という流れが成立するように見えます。ここ、気になりますよね。

噂の流れを整理すると、生卵白のアビジン→ビオチンの吸収を妨げる→極端な条件ではビオチン欠乏→欠乏症状として脱毛することがある、というものです。

ただし、非常に大切なのは、この流れにはいくつもの段階があることです。健康な成人を対象に、未変性の卵白を用いた食事で28日間ビオチン状態を低下させた実験研究はありますが、これは管理された研究条件のデータであり、一般的な卵摂取がAGAを引き起こすことを示す研究ではありません。[3]

「アビジンがビオチン吸収を妨げる」という事実と、「普通に卵を食べている人がAGAになる」という話は同じではありません。また、「ビオチン欠乏で脱毛することがある」という事実と、「ビオチンを多く摂ればAGAが治る」という話も同じではありません。[1][2]

ビオチン欠乏による脱毛とAGAは別

特に分けて考えてほしいのが、栄養素の欠乏によって起こる脱毛とAGAです。

AGAは男性型脱毛症とも呼ばれ、思春期以降に始まり徐々に進行する脱毛症です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、毛周期を繰り返す中で成長期が短くなり、前頭部や頭頂部の毛髪が軟毛化して細く短くなることが病態の基盤として説明されています。また、発症には遺伝と男性ホルモンが関与するとされています。[2]

一方、ビオチン欠乏に伴う脱毛は、身体に必要なビオチンが不足した状態で現れる症状の一つです。[1]

ビオチン欠乏による脱毛=AGAではありません。

ですから、「生卵白がビオチン吸収を妨げることがある」からといって、「卵を食べるとAGAになる」というところまで一気につなげるのは飛躍なんです。

さらにゆで卵は加熱されている

そして今回のテーマであるゆで卵には、もう一つ大きなポイントがあります。

アビジンはタンパク質で、調理による加熱で変性すると、ビオチン吸収を妨げる働きを失うとNIHは説明しています。[1] そのため、生の卵白について知られているビオチン吸収阻害の話を、十分に加熱されたゆで卵へそのまま当てはめることはできません。

つまり、「卵ではげる」という言葉だけを見ると怖く感じますが、実際には生卵白の成分についての話が、卵全体、さらにゆで卵まで広げられてしまっている面があるんですね。

「卵を食べるとはげる」と一括りにしないことが大切です。生卵白、加熱した卵、ビオチン欠乏、AGAは、それぞれ分けて考えましょう。

ですので、普段ゆで卵を食べているあなたが「卵を食べていたから薄毛になったのかも」と急に食べるのをやめる必要は基本的にありません。抜け毛が気になっている場合は、卵一つを犯人にするよりも、薄毛がどこからどのように進んでいるのか、髪が細くなっていないか、頭皮に異常がないかなどを見た方が原因に近づきやすいですよ。AGAの診断では、家族歴や脱毛の経過を確認し、額の生え際や前頭部・頭頂部の毛髪が細く短くなっているかを視診することが重要とされています。[2]

生卵ではげると言われる理由

生卵ではげると言われる理由と毛周期を解説する髪の毛さんとけい太

生卵ではげると言われる一番の理由も、やはりアビジンです。

正確に言うと、卵全体が問題なのではなく、生の卵白がポイントになります。生卵白のアビジンはビオチンと強く結合し、その吸収を妨げます。[1] そのため、「卵にはビオチンが含まれているのに、生卵だとビオチン不足になるってどういうこと?」と一見矛盾したように見える情報が出てくるんですね。

でも、食品中にビオチンが含まれていることと、それが体内でどの程度利用されるかは別の話です。生卵白に含まれるアビジンがビオチンと結合すると、消化管から吸収されにくくなります。[1]

生卵を一回食べただけで髪が抜けるわけではない

ここで一番避けたいのが、「じゃあ昨日卵かけご飯を食べたから今日の抜け毛が増えたんだ」と考えてしまうことです。

生卵を一度食べたから翌日にビオチン欠乏になって大量に髪が抜ける、というような仕組みを示す根拠はありません。ビオチン欠乏の症状は通常徐々に現れ、NIHも健康な人が通常の混合食をとっている状況で重度のビオチン欠乏は報告されていないと説明しています。[1]

一方、健康な成人に卵白を用いた食事を28日間摂取させ、ビオチン状態の低下を実験的に確認した研究はあります。[3] だからこそ、生卵白を極端に多く長期間摂るような条件と、一般的な食生活の中で生卵を食べるケースを分けて考えることが大切です。

生卵を食べる=AGAになる、ではありません。生卵白にアビジンが含まれることは事実ですが、通常の生卵摂取がAGAを直接引き起こすと示した臨床的根拠とは別の話です。

生卵白とAGAの話を混ぜない

AGAでは、テストステロンがII型5α還元酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、男性ホルモン感受性毛包の受容体に作用することなどが病態に関与します。日本皮膚科学会のガイドラインでは、前頭部や頭頂部で成長期が短縮し、毛髪が軟毛化していく仕組みが説明されています。[2]

つまり、AGAでは「髪をつくる材料が一つ足りないから髪が抜ける」という単純な問題ではありません。

生え際が徐々に後退する、つむじ周辺の地肌が年単位で目立ってくる、以前より細く短い髪が増えているといった変化がある場合は、生卵をやめれば解決するとは考えない方がいいでしょう。AGAの診断では、このような進行パターンや毛髪の細毛化を確認します。[2]

一方で、生卵白ばかりを極端に大量摂取するような食生活をしているなら、薄毛のためだけでなく栄養バランスという意味でも見直す価値があります。

生卵を完全禁止する必要まではない

「アビジンがあるなら、生卵は一生食べない方がいいの?」と思うかもしれません。

でも、薄毛対策として一般の人に生卵を全面禁止するような医学的根拠はありません。生卵白を多量に含む実験食でビオチン状態を低下させた研究はありますが、その条件を通常の食生活へそのまま一般化することはできません。[3]

もしアビジンが気になるなら、ゆで卵、卵焼き、目玉焼きなど、加熱した卵料理を選ぶ方法があります。調理によってアビジンは変性し、ビオチン吸収を妨げる作用を失います。[1]

つまり、「生卵にはアビジンという栄養学上の論点がある。でも、生卵を普通に食べるだけでAGAになるとは言えない」。このくらいの距離感が一番正確かなと思います。

生卵については薄毛とは別に食品衛生上の注意もあります。髪だけでなく、保存方法や消費期限など通常の食品としての安全性にも注意してください。

卵を食べた翌日に抜け毛が多かったとしても、それだけで卵が原因とは判断できません。髪には成長期・退行期・休止期という毛周期があり、毛包は周期的に成長と退縮を繰り返します。[4] 日々の食事とその日の抜け毛を一対一で結びつけないようにしてくださいね。

卵白とアビジンの関係

生卵白のアビジンがビオチンの吸収を妨げる仕組み

アビジンは卵白に含まれている糖タンパク質です。生卵白中のアビジンは食事由来のビオチンと強く結合し、消化管からの吸収を妨げます。[1]

ネット上では「アビジンがビオチンを破壊する」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。より正確には、アビジンがビオチンと強く結合することで、ビオチンの吸収を妨げるという働きです。[1]

ここ、地味に見えるけどかなり重要なんですよ。

「破壊する」と言われると、ビオチンそのものを化学的に壊してゼロにしてしまうような印象になります。しかし実際に問題になるのは、アビジンとビオチンが強く結合することで、身体がビオチンを吸収しにくくなることです。

アビジンはなぜゆで卵では問題になりにくい?

アビジンはタンパク質です。NIHは、調理によってアビジンが変性すると、ビオチン吸収を妨げることができなくなると説明しています。[1]

そのため、ゆで卵、十分に火を通した卵焼き、目玉焼きなどについては、生卵白と同じ理屈で「ビオチン不足になるからはげる」と説明することはできません。

卵の食べ方 アビジンの考え方 薄毛との考え方
ゆで卵 加熱によってアビジンが変性する 生卵白と同じビオチン吸収阻害を前提に考えない
十分に加熱した卵焼き 加熱によってアビジンが変性する 生卵白とは分けて考える
十分に加熱した目玉焼き 加熱された卵白では作用が問題になりにくい 通常摂取でAGAになる根拠は確認されていない
生卵 生卵白に活性のあるアビジンを含む ビオチン吸収阻害の論点はあるがAGAとは別
生卵白を多量に含む食事を長期継続 ビオチン状態を低下させる可能性がある 実験研究ではビオチン欠乏状態が誘導されている

表のアビジンに関する整理はNIHの公的資料と、人で卵白食を用いてビオチン状態を低下させた研究をもとにしています。[1][3]

半熟卵や温泉卵はどう考える?

ここまで読むと、「じゃあ半熟のゆで卵は?」「温泉卵なら大丈夫?」という疑問が出てくると思います。

確かに気になりますよね。

ただ、家庭での卵料理は、卵の大きさ、冷蔵庫から出した直後かどうか、加熱時間、湯の温度など条件がかなり違います。今回確認した公的資料は「調理によってアビジンが変性する」と説明していますが、家庭のあらゆる加熱条件ごとに「何%失活する」といった一律の数値までは示していません。[1]

今回の記事で押さえておけばいいのは、アビジンは加熱によって変性し、十分に加熱された卵では生卵白と同じようにビオチン吸収を妨げる作用を心配する必要性が小さくなるという基本です。

薄毛が心配だからといって、ゆで卵の黄身が少し半熟だっただけで「髪に悪い」と慌てる必要はありません。食事全体のバランスや摂取頻度まで含めて考えましょう。

卵白そのものを悪者にしない

もう一つ大切なのが、「アビジンがある=卵白は身体に悪い」という話ではないことです。

今回問題にしているのは、あくまで生の卵白に含まれるアビジンとビオチンの関係です。加熱によってアビジンは変性します。[1]

加熱した卵白まで避けて、薄毛対策として卵黄しか食べない、といった対応をする必要はありません。

髪について調べていると、どうしても「この食品は髪にいい」「この成分ははげる」と白黒をつけたくなります。でも実際の栄養はそんなに単純じゃないんですよね。

生なのか加熱されているのか、普通の量なのか極端な量なのか、欠乏しているのか十分足りているのか。この条件を分けて考えるだけでも、卵とはげの情報はかなり整理しやすくなりますよ。

アビジンとビオチンの関係

ビオチン不足を補うことと大量摂取の違い

次は、アビジンの相手となるビオチンについて、もう少し詳しく見てみましょう。

ビオチンは水溶性のB群ビタミンで、脂肪酸、ブドウ糖、アミノ酸の代謝に関わる複数のカルボキシラーゼの補酵素として働きます。[1]

そしてビオチンが不足した場合には、皮膚症状などとともに、毛髪が薄くなったり脱毛したりすることがあります。[1]

ここまでは、「ビオチンと髪には関係がある」と言っていい部分です。

でも、ここから「ならビオチンを大量に摂れば髪が増える」と考えるのは飛躍なんです。NIHは、髪・皮膚・爪を目的としたビオチン補給について、健康な人での有効性を支持する根拠は限られており、毛髪に関する報告も少数の症例報告などにとどまるとしています。[1]

ビオチンが不足すると脱毛が起こり得ることと、ビオチンが足りている人が追加で大量摂取すると発毛することは別の話です。

不足を補うことと上乗せすることは違う

たとえば身体に必要な栄養素が不足していて、それが原因となって何らかの症状が出ている場合、不足を解消することには意味があります。

でも、すでに必要な量を摂れている人が、そこから何倍、何十倍と追加したからといって、その栄養素が関係する身体機能まで何倍にも強くなるわけではありません。ビオチンについても、健康な人の毛髪改善を目的とした追加摂取を支持するエビデンスは限定的です。[1]

髪の世界ではここがよく混同されます。

「鉄不足で脱毛することがある→鉄をたくさん飲めば発毛する」「亜鉛不足が問題になる→亜鉛を大量に飲めば髪が増える」「ビオチン不足で脱毛する→ビオチンを大量摂取すればふさふさになる」。こうした考え方は単純すぎるんですね。

私たち髪の毛も、栄養を999まで積めば伝説の装備に進化するゲームキャラではありません。

ビオチン欠乏は一般的なAGAと同じではない

NIHは、ビオチン欠乏はまれで、健康な人が通常の混合食をとる状況で重度のビオチン欠乏は報告されていないとしています。[1]

一方で、特定の疾患や食生活などの条件によって不足が起こる場合はあります。生卵白に含まれるアビジンがビオチン吸収を妨げることや、卵白食を使って人でビオチン状態を低下させられることは確認されています。[1][3]

ただし、ビオチン欠乏による脱毛は、男性の生え際や頭頂部で徐々に進行するAGAと同一の病態ではありません。AGAは毛周期の短縮や男性ホルモン、遺伝的背景などが関与する脱毛症です。[2]

ビオチン欠乏による脱毛≠AGAです。ここを混同すると、「ビオチンを摂ればAGAが治る」という誤った期待につながりやすくなります。

ビオチンサプリを安易に大量摂取しない

「だったら念のためビオチンのサプリを飲んでおけばいいのでは?」と思う人もいるかもしれません。

しかし、髪目的で高用量のビオチンサプリを大量に追加することには注意が必要です。ビオチンが不足していない一般の人について、追加摂取で発毛するという質の高い根拠は十分ではありません。[1]

さらに、高用量のビオチンは、ビオチン・ストレプトアビジン系を利用する一部の臨床検査に干渉し、偽高値や偽低値など誤った検査結果を生じさせることがあります。NIHとFDAはいずれもこの検査干渉について注意を示しています。[1][5]

そのため、サプリメントを利用している場合は、健康診断や病院での検査時に、摂取しているサプリの名称や成分を医師・医療スタッフへ伝えておくことが大切です。

髪にいいらしいから、とりあえず大量に飲んでおこう。これはおすすめしません。

ビオチンは髪のためだけに存在している栄養素ではなく、身体全体の代謝に関わるものです。髪だけを見て一つの栄養素を極端に増やすのではなく、食事全体を整えることを基本にしてくださいね。

卵かけご飯ではげる心配は?

卵かけご飯と抜け毛の因果関係を法廷で解説する髪の毛さんとけい太

卵かけご飯が好きな人は、ここが一番気になるかもしれませんね。

卵かけご飯では通常、卵白も加熱せずそのまま食べます。そのため、生卵白に含まれるアビジンを摂取すること自体は事実です。[1]

では、卵かけご飯を食べる人ははげやすくなるのでしょうか。

結論から言うと、卵かけご飯を普通に食べることが、AGAや一般的な薄毛の直接的な原因になると示した臨床的根拠は確認されていません。アビジンによるビオチン吸収阻害と、AGAの病態は分けて考える必要があります。[1][2]

卵かけご飯にもアビジンはある

卵かけご飯では卵白が生なので、アビジンは加熱による変性を受けていません。そのため、ビオチンと結合して吸収を妨げるという性質については、ゆで卵とは条件が違います。[1]

でも、それだけで「卵かけご飯を1杯食べるとはげる」という結論にはなりません。

人を対象に卵白を用いてビオチン状態を低下させた研究はありますが、28日間の実験的な卵白食という条件で行われており、一般的な卵かけご飯の摂取がAGAを起こすことを示した研究ではありません。[3]

卵かけご飯にはアビジンが存在する=事実
卵かけご飯を普通に食べるとAGAになる=確認されていない

「毎朝食べている」はどう考える?

では、卵かけご飯を毎朝食べている場合はどうでしょう。

この場合も、「毎日食べている」という回数だけで脱毛リスクを決めることはできません。卵の量、その他の食事内容、栄養状態などを含めて考える必要があります。

ただ、生卵白のアビジンが気になって不安を抱えながら毎日食べるくらいなら、たまにゆで卵や卵焼きなど加熱した卵料理へ変えるのは分かりやすい選択肢です。加熱でアビジンは変性します。[1]

薄毛対策として絶対に卵かけご飯を禁止しなければならない、という意味ではありません。

食べた翌日の抜け毛と結びつけない

卵かけご飯を食べた翌朝、枕に髪が何本か付いていると、「昨日の卵かけご飯か?」と疑いたくなるかもしれません。

でも、髪はそんな短い時間で単純に反応するものではありません。

毛髪には成長期、退行期、休止期などからなる毛周期があり、毛包は周期的に成長と退縮を繰り返します。[4] 今日抜けた髪が、昨日食べた一品だけの影響で急に抜けたと判断することはできません。

なので、たまに卵かけご飯を食べたからといって、翌朝枕や排水口を凝視しながら「終わった……」と絶望する必要はありません。私としても、そんな簡単に食卓の一品だけで退場させられることにされたら困ります。

アビジンが気になる場合は、ゆで卵、卵焼きなど加熱した卵料理を選択できます。大切なのは、生卵を一度食べたことよりも、極端に偏った食生活を長期間続けないことです。

抜け毛が増えている場合には、「卵かけご飯を食べたか」だけを見るより、生え際や頭頂部の変化、髪の細さ、体調の変化、急激なダイエットの有無などを確認した方が、薄毛の原因を考えるうえではずっと役に立ちます。AGAの鑑別では、円形脱毛症の一部、慢性休止期脱毛、全身性疾患に伴う脱毛、貧血、急激なダイエット、薬剤による脱毛などを除外することが重要とされています。[2]

ゆで卵ではげる心配と髪への影響

ここまでで、ゆで卵ではげるという噂の中心が、生卵白のアビジンにあることが分かってきました。

では逆に、ゆで卵は髪にいいのでしょうか。ゆで卵には、たんぱく質やビオチン、亜鉛、鉄、セレンなどさまざまな栄養素が含まれています。[6] そのため、髪を含む身体をつくる食事の一部として利用することはできます。

ただし、ここでも「栄養がある」と「発毛する」は別です。ゆで卵を食べるだけでAGAが治るわけではありませんし、薄毛の原因がすべて栄養不足というわけでもありません。[1][2]

ここからは、ゆで卵を悪者にしないのと同じくらい、万能な育毛食品として持ち上げすぎないように整理していきます。

ゆで卵と薄毛の関係

ゆで卵以外にもある薄毛の原因を調べる髪の毛さんとけい太

ゆで卵そのものが薄毛の原因になると示した臨床的根拠は確認されていません。 また、ゆで卵では加熱によってアビジンが変性するため、生卵白について知られているビオチン吸収阻害をそのまま当てはめるのは適切ではありません。[1]

一方で、「ゆで卵を食べているのに抜け毛が増えた」という人もいると思います。

ここ、かなり不安になりますよね。

ただし、食べ始めた時期と抜け毛が気になり始めた時期が同じだったというだけでは、ゆで卵が原因とは判断できません。

薄毛にはいろいろな原因がある

薄毛や抜け毛は一つの原因だけで起こるものではありません。AGAのガイドラインでは、慢性休止期脱毛、円形脱毛症の一部、膠原病や慢性甲状腺炎などの全身性疾患、貧血、急激なダイエット、薬剤による脱毛などとの鑑別が重要とされています。[2] また、円形脱毛症は典型的には円形から類円形の脱毛斑を生じる後天性・非瘢痕性脱毛症で、自己免疫性疾患と考えられています。[7]

  • AGAなどの男性型・女性型脱毛症
  • 円形脱毛症
  • 休止期脱毛症
  • 頭皮や全身の疾患に関連する脱毛
  • 急激なダイエットや栄養状態の変化に伴う脱毛
  • 薬剤などの影響による脱毛

たとえば生え際が数か月から数年かけて後退している、頭頂部の地肌が徐々に透けている、以前より細く短い毛が増えている場合は、ゆで卵ではなくAGAなどの可能性を考える必要があります。[2]

反対に、円形にはっきり抜けた部分が現れた場合や、急激に脱毛が進んだ場合には、AGAとは違う脱毛症も考えなければいけません。[7]

急激な脱毛、円形の脱毛、頭皮の強い赤み・痛み・かゆみなどがある場合や、薄毛が明らかに進行している場合は、「食べ物のせいだろう」と自己判断せず、皮膚科などで原因を確認してください。

食べ始めた時期と抜け毛が重なっても因果関係とは限らない

人は何か変化が起こると、その直前に始めたものを原因だと考えやすいです。

「プロテインを飲み始めたら抜け毛が増えた」「ゆで卵を毎朝食べるようになったら髪が薄くなった」「新しいシャンプーに変えたらはげてきた」。こうした時間的な一致だけでは原因かどうかまでは分かりません。

髪には長い毛周期があり、AGAは毛周期の成長期が短くなることで徐々に細く短い毛が増える脱毛症です。[2][4] 今日鏡を見て気付いた変化が、昨日や先週から始まったとは限らないんですね。

むしろ以前からゆっくり進んでいた変化に、たまたま今気付いた可能性もあります。

見るべきなのは一日の抜け毛より長期的な変化

薄毛が不安になると、排水口の毛を数えたり、枕の毛を毎朝確認したりしがちです。

でも、一日の抜け毛の本数だけでAGAかどうかを判断することはできません。AGAの診断では、脱毛の経過や家族歴を確認し、額の生え際の後退、前頭部・頭頂部の毛髪の細毛化などを視診します。[2]

それより、生え際の位置、つむじ周辺の地肌の見え方、髪一本一本の太さ、短く細い毛が増えていないかなどを長期的に見る方が役立ちます。

同じ照明、同じ髪型、同じ角度で定期的に写真を撮ると変化を比較しやすいですよ。

ゆで卵を食べているかどうかだけでは薄毛の原因は判断できません。食べ物一品よりも、薄毛の場所・進み方・髪の太さ・頭皮症状などを確認しましょう。

ゆで卵を食べ始めてから髪が気になったとしても、まず「卵をやめる」だけで終わらせないこと。原因が別にあるなら、卵をやめても薄毛は進んでしまいます。

ゆで卵は髪にいい食品?

ゆで卵と髪に必要な栄養バランス

ゆで卵は、髪を含む身体に必要な栄養素を摂れる食品の一つです。

文部科学省の食品成分データベースによると、鶏卵の全卵・ゆで100gには、たんぱく質12.5g、ビオチン25.0μg、亜鉛1.1mg、鉄1.5mg、セレン25μgが含まれています。[6]

髪について調べていると、こうした栄養素の名前をよく見かけますよね。

栄養素 ゆで卵100g当たり ポイント
たんぱく質 12.5g 身体を構成する栄養素の一つ
ビオチン 25.0μg 脂肪酸・糖・アミノ酸などの代謝に関与
亜鉛 1.1mg 多くの酵素反応に関わる必須ミネラル
1.5mg 身体の正常な機能維持に必要
セレン 25μg 必須微量元素の一つ

上記の数値は食品成分表における可食部100g当たりの値です。卵1個当たりの量とは異なるので注意してください。[6]

髪の主成分はケラチン

毛幹は角化した上皮細胞から成り、最終的な毛髪はケラチンから構成されます。[4]

そのため、極端な食事制限などによってエネルギーやたんぱく質を含む栄養状態が大きく崩れることは、身体全体の健康という意味でも望ましくありません。

ゆで卵は調理が簡単で、たんぱく質を摂りやすい食品なので、普段の食事へ取り入れやすいのはメリットです。

ただし、卵だけを大量に食べれば髪がどんどん作られるわけではありません。

肉、魚、大豆製品、乳製品など、さまざまなたんぱく質源があります。野菜や穀類なども含め、食事全体を整えることが基本です。

生卵より加熱卵はタンパク質も利用しやすい

人を対象とした小規模な研究では、調理した卵タンパク質の真の回腸消化率は90.9±0.8%、生卵では51.3±9.8%で、加熱によって卵タンパク質の消化性が有意に高まったと報告されています。ただし対象者は回腸瘻を有する5人であり、この数値を一般の人へそのまま広く一般化するには注意が必要です。[8]

つまり、加熱はアビジンの問題を小さくするだけでなく、少なくともこの研究では卵タンパク質の消化性を高める結果になっています。

だからといって、生卵が危険な食品でゆで卵だけが正解、という意味ではありません。髪について考える場合には、「ゆで卵は普通の栄養食品として取り入れやすい」と考えるくらいがちょうどいいです。

栄養価があることと育毛効果があることは別

ここはこの記事全体でもかなり重要なポイントです。

ゆで卵に髪を構成するために使われる栄養素が含まれることと、ゆで卵そのものに発毛効果があることは別です。

「ビオチンが入っている」「たんぱく質が多い」「亜鉛もある」と聞くと、それだけで育毛食品のように感じるかもしれません。

でも、AGAは毛周期や男性ホルモン、遺伝的背景などが関わる進行性の脱毛症です。[2] また、健康な人へのビオチン補給で毛髪が増えるという根拠も限定的です。[1]

ゆで卵は髪を直接生やす食品ではなく、髪を含む身体に必要な栄養素を摂れる食品の一つと考えるのが適切です。

髪のために何か一品だけ追加するより、偏った食事を減らし、必要な栄養を幅広い食品から摂る。髪の毛としては、その方がずっと現実的だなーと思います。

ゆで卵の育毛効果はある?

ゆで卵は食べる育毛剤ではないことを解説する髪の毛さん

ゆで卵について調べていると、「育毛におすすめ」「薄毛対策になる」「髪を増やす食品」と紹介されていることがあります。

確かに、ゆで卵にはたんぱく質、ビオチン、亜鉛などが含まれています。[6] そのため、髪を含む身体の栄養状態を整える食事の一部として利用することはできます。

ただし、ゆで卵を食べることでAGAが改善したり、毛髪の本数が増えたりする発毛効果が証明されているわけではありません。 AGAにはガイドラインで検討される医学的治療があり、食事だけで治療する脱毛症として位置づけられてはいません。[2]

ここはかなり重要です。

「髪に必要」と「食べれば生える」は違う

たんぱく質やビタミン、ミネラルは、身体を正常に維持するために必要です。

そして極端な食事制限などによる栄養状態の変化は脱毛の鑑別要因の一つとして考慮されます。日本皮膚科学会のAGAガイドラインでも、急激なダイエットや貧血、全身性疾患などに伴う脱毛を除外することが重要とされています。[2]

その意味では、必要な栄養を摂ることは大切です。

でも、栄養状態に大きな問題がない人がゆで卵を追加したからといって、髪が1か月で増える、AGAが止まる、M字部分が戻る、という話にはなりません。

ゆで卵は「育毛剤の食べ物版」ではありません。髪を含む身体の栄養を支える普通の食品の一つです。

AGAは食事だけで治療するものではない

AGAでは、テストステロンがII型5α還元酵素によってDHTへ変換され、男性ホルモン感受性毛包の受容体に作用することなどを通じて成長期が短縮し、髪が細く短くなっていきます。[2]

そのため、たんぱく質やビオチンを摂って身体に材料が十分あったとしても、AGAの仕組みそのものが進行していれば、髪の細毛化が続く可能性があります。

たとえるなら、工場に材料をたくさん運び込んでも、生産ラインそのものに別の問題があれば、材料を増やすだけでは解決しない感じです。

髪のために毎朝ゆで卵を3個、4個と増やしていくより、生え際や頭頂部が実際に変化していないかを確認する方が大切です。

栄養不足が疑われる場合は食生活全体を見る

逆に、食事量がかなり少ない、極端なダイエットを続けている、特定の食品しか食べないなど、栄養状態そのものに問題がありそうな場合は話が違います。

その場合も、ゆで卵だけ追加すれば全部解決するということではありません。

エネルギー、たんぱく質、ビタミン、ミネラルなど、食生活全体を見る必要があります。

「髪にいい食べ物ランキング1位を毎日食べる」という考え方より、「不足しないよう全体を整える」という考え方の方が自然です。

薄毛が進行している場合、食生活を整えることと薄毛の原因を確認することを別々に進めてください。AGAは徐々に進行する脱毛症なので、「まず半年ゆで卵を食べて様子を見る」と医学的評価を先延ばしにする必要はありません。[2]

ゆで卵は便利で栄養価のある食品です。ただし、薬でも発毛剤でもありません。この立ち位置を間違えないことが、ゆで卵と髪の関係を正しく理解する一番のポイントですよ。

ビオチンと薄毛の関係

ビオチンと薄毛およびサプリメントの注意点

ビオチンと薄毛について検索すると、「ビオチンサプリで髪が生える」「ビオチンは育毛ビタミン」「髪にはビオチンが必須」といった情報も見つかります。

そこで覚えておいてほしいのが、ビオチンについては欠乏症への補給不足していない人への追加摂取を分けて考える必要があるということです。

ビオチン欠乏症では、皮膚症状などとともに脱毛が症状として現れる場合があります。[1] そのため、実際にビオチンが不足している人については、原因に応じて不足を解消することが重要になる可能性があります。

一方で、ビオチンが不足していない一般の人が、発毛を目的として大量に摂取した場合の効果については、十分な根拠が確立しているとは言えません。NIHは、毛髪を目的としたビオチン補給の根拠は少数の症例報告や小規模研究に限られるとしています。[1]

不足している人と不足していない人を分ける

この違いは、髪の栄養情報を見るときにかなり重要です。

ビオチンが不足して脱毛している人にビオチンを補うのと、すでに必要な量を摂取している人がさらに大量に追加するのは、まったく条件が違います。

「欠乏すると症状が出る栄養素だから、多く摂れば逆方向の効果が出る」と考えるのは単純すぎます。健康な人の毛髪改善を目的としたビオチン補給については、現時点で十分な根拠がありません。[1]

水が足りなければ脱水になりますが、水を必要量より何倍も飲めば身体能力が何倍にもなるわけではないですよね。栄養も同じように、必要量を満たすことと過剰に追加することを分ける必要があります。

ビオチン欠乏による脱毛とAGAは別物です。ビオチンを多く摂ることでAGAを治療できる、という関係にはなりません。

ゆで卵にもビオチンは含まれる

文部科学省の食品成分データベースでは、ゆでた全卵100gにビオチン25.0μgが含まれています。[6]

また、生の全卵にもビオチン自体は含まれています。つまり、生卵は「ビオチンがまったく含まれていない食品」なのではありません。

問題になるのは、生卵白に含まれるアビジンがビオチンと結合し、その吸収を妨げることです。[1]

卵黄や全卵にビオチンが含まれる一方、アビジンの論点は生卵白にある。この違いを知っておくと、「卵にはビオチンがあるのに生卵がよくないと言われるのはなぜ?」という疑問がかなり整理できます。

ビオチンサプリと検査値の問題

もう一つ見落としたくないのが、高用量のビオチンサプリと血液検査の関係です。

高用量のビオチンを摂取していると、一部の検査方法に干渉して、本来とは異なる結果が出る可能性があります。FDAは、ビオチンが特定の臨床検査へ有意に干渉し、検出されないまま誤った検査結果につながる可能性について注意喚起しています。[5]

そのため、髪目的のサプリだから薬ではないし医師に言わなくてもいい、とは考えないようにしてください。

美容系サプリ、マルチビタミン、B群サプリなどにビオチンが含まれている場合もあります。健康診断や血液検査を受ける際には、普段飲んでいるサプリメントも含めて医師や医療スタッフへ伝えておくと安心です。

サプリメントは「食品だからいくら飲んでも安全」というものではありません。ビオチンに限らず、髪のために特定の栄養素を大量摂取する前に、本当に不足しているのかを考えましょう。

薄毛が気になるならビオチンだけを追わない

生え際や頭頂部の薄毛が進んでいるのに、「ビオチンが足りないのかもしれない」とサプリだけを増やし続けるのはおすすめできません。

AGA、円形脱毛症、休止期脱毛症など、脱毛にはさまざまな原因があります。AGAのガイドラインでも、複数の脱毛疾患や全身性疾患、急激なダイエットなどとの鑑別が重要とされています。[2]

特にAGAは、ビオチン不足を解消すれば治るという病気ではありません。

栄養は髪にとって大切。でも、栄養だけが髪のすべてではない。ここを押さえておくと、「このサプリだけでふさふさ」「この食品だけ食べれば大丈夫」といった極端な情報にも振り回されにくくなりますよ。

ゆで卵を毎日食べると髪は?

ゆで卵を毎日食べる場合の食事バランス

ゆで卵を毎日食べるとはげるのか、逆に毎日食べれば髪によいのか。この疑問もかなり気になりますよね。

まず、毎日ゆで卵を食べることによって脱毛するという臨床的根拠は確認されていません。 加熱したゆで卵なので、生卵白のアビジンについての話をそのまま当てはめることもできません。[1]

同時に、毎日ゆで卵を食べれば発毛するという根拠もありません。健康な人におけるビオチンの毛髪改善効果の根拠は限定的で、AGAは食品だけで治療するものではありません。[1][2]

つまり、「毎日食べるとはげる」も「毎日食べれば髪が増える」も、どちらも極端なんです。

ゆで卵は1日何個までならはげない?

「じゃあ、1日何個までならはげないの?」と思うかもしれません。

でも、毛髪について1日○個を超えるとはげるという医学的基準はありません。

ネット記事などでは「1日1個」「1日2個」など、さまざまな数字を見かけるかもしれません。しかし、それらを「はげないための安全個数」として考えるのは適切ではありません。

卵を何個食べるかは、薄毛だけではなく、食事全体のエネルギー量、ほかの食品とのバランス、持病、医師や管理栄養士から受けている食事指導なども含めて考えるものです。

髪だけを基準に「ゆで卵は1日1個まで」「2個を超えたらはげる」といった架空の安全ラインを作る必要はありません。

毎日食べるなら食事全体を見る

ゆで卵は調理が簡単で、たんぱく質や複数のビタミン・ミネラルを含む食品です。[6] そのため、朝食や昼食へ取り入れている人も多いと思います。

毎日食べること自体よりも大切なのは、食生活が卵だけに偏っていないかです。

髪や身体にはさまざまな栄養素が必要なので、肉、魚、大豆製品、乳製品、野菜、果物、穀類など、複数の食品を組み合わせる方が自然です。

毎朝ゆで卵だけ、昼もゆで卵だけ、夜もゆで卵中心という食生活では、卵が悪いというより食事全体の偏りが問題になります。

ゆで卵を毎日食べてもAGAは別に考える

そして、毎日ゆで卵を食べているのに薄毛が進んでいるからといって、「卵の量が足りないんだ」と増やす必要はありません。

前頭部や頭頂部が少しずつ薄くなる、髪が以前より細く短くなる、生え際が後退するといった変化が続いているなら、食事とは別にAGAなどの可能性を考えましょう。こうしたパターンはAGAの診断で確認される特徴です。[2]

ゆで卵を食べることと、AGAの治療は別の話です。

毎日ゆで卵を食べる=はげる、ではありません。
毎日ゆで卵を食べる=髪が生える、でもありません。
普通の食品として食事全体の中で取り入れる、と考えるのが一番自然です。

髪のために食べ物を選ぶこと自体は悪くありません。でも、「これさえ食べれば大丈夫」という食品はありません。

睡眠、食事、運動など身体全体の健康を整えながら、薄毛が進んでいる場合は薄毛そのものの原因を確認する。この二本立てで考えてくださいね。

ゆで卵ではげる説のまとめ

ゆで卵ではげる説の最終まとめ

ゆで卵ではげるのかという疑問について、ここまでかなり細かく見てきました。

情報が多かったので、最後にもう一度シンプルに整理します。

  • ゆで卵を食べることでAGAになるという根拠は確認されていない
  • 卵ではげるという噂の中心は生卵白に含まれるアビジン
  • アビジンはビオチンを破壊するのではなく、ビオチンと結合して吸収を妨げる
  • アビジンは加熱によって変性する
  • 十分に加熱したゆで卵では生卵白と同じ心配をする必要性は小さい
  • ビオチン欠乏では脱毛が起こることがある
  • ビオチン不足による脱毛とAGAは別物
  • 卵かけご飯には生卵白由来のアビジンが存在する
  • 通常の卵かけご飯摂取がAGAを起こす根拠は確認されていない
  • ゆで卵はたんぱく質やビオチンなどを含む食品の一つ
  • ゆで卵を食べれば発毛するという根拠もない
  • 髪について「ゆで卵は1日○個まで」という安全個数は設定されていない

ゆで卵を怖がりすぎる必要はない

つまり、ゆで卵ではげると必要以上に心配する必要はありません。

生卵白に含まれるアビジンがビオチンと結合して吸収を妨げること、そして調理によってアビジンが変性することは確認されています。[1] この事実を「卵なら何でもはげる」と広げないことが大切です。

本来は、生卵白を多量に摂るような実験条件と、一般的な食生活の中でゆで卵を食べることを分けて考える必要があります。[3]

逆に育毛食品として期待しすぎない

一方で、ゆで卵を万能な育毛食品として扱うのもおすすめしません。

ゆで卵には、たんぱく質、ビオチン、亜鉛、鉄など、身体に必要なさまざまな栄養素が含まれています。[6]

だから「髪を含む身体の栄養を支える食品の一つ」とは言えます。

でも、ゆで卵を毎日食べればAGAが治る、髪が増える、薄くなった生え際が戻るという意味ではありません。AGAは毛周期や男性ホルモンなどが関わる脱毛症であり、ビオチン補給による毛髪改善の根拠も健康な人では限定的です。[1][2]

髪に必要な栄養を含む食品=発毛効果が証明された食品、ではありません。

本当に抜け毛が増えているなら卵以外も見る

もしあなたの抜け毛が急に増えている、円形に髪が抜けている、頭皮に赤みや強いかゆみがある、生え際や頭頂部の薄毛が徐々に進行している、といった場合は、原因をゆで卵だけに求めないでください。円形脱毛症は典型的には円形から類円形の脱毛斑を生じ、AGAでは前頭部・頭頂部の毛髪が徐々に細く短くなるという異なる特徴があります。[2][7]

特に、生え際や頭頂部を中心に数か月から数年かけて髪が細くなっている場合は、AGAなどの進行性の薄毛も考える必要があります。[2]

食生活を整えることと、脱毛症の原因を確認することは別々に考える。それが一番大切かなと思います。

殻をむくと白身まで「はげる」のが知りたかった場合

ちなみに、「ゆで卵 はげる」と検索したあなたが、髪ではなく「ゆで卵の殻をむいたら白身まで剥げる」という意味で調べていた場合は、これは完全に別のお話です。

本記事では薄毛との関係を中心に扱っているため、殻がむきにくい理由や上手なむき方については料理上の別テーマとして考えてください。

私としては髪の方の「はげる」には全力で抵抗したいところですが、ゆで卵の白身が少しくらい剥げるのは……まあ、食べれば同じです。

最終結論
ゆで卵を通常の食生活の範囲で食べることで、AGAになると心配する必要は基本的にありません。噂の中心は生卵白のアビジンですが、加熱したゆで卵では同じように考える必要はありません。ただし、ゆで卵を食べれば髪が生えるわけでもありません。食事はバランスよく、進行する薄毛は食事とは別に原因を確認しましょう。

健康状態、脱毛症、サプリメントなどについて正確な情報が必要な場合は、公的機関や医療機関などの公式情報をご確認ください。抜け毛の状態や体質によって必要な対応は異なるため、最終的な判断は皮膚科などの専門家にご相談ください。

参考文献

  1. National Institutes of Health, Office of Dietary Supplements: Biotin – Health Professional Fact Sheet


  2. Indicators of marginal biotin deficiency and repletion in humans: validation of 3-hydroxyisovaleric acid excretion and a leucine challenge

  3. NCBI Bookshelf, StatPearls: Physiology, Hair

  4. U.S. Food and Drug Administration: Biotin Interference with Troponin Lab Tests – Assays Subject to Biotin Interference


  5. 日本皮膚科学会「円形脱毛症診療ガイドライン 2024」

  6. Digestibility of cooked and raw egg protein in humans as assessed by stable isotope techniques

目次